シラバス - 刑法I(総論)

  • ナンバリングコードCode
    LAW-bas2-203
  • 科目名Subject Name
    刑法I(総論)
  • 担当者名Instructor
    梅崎 進哉
  • 単位Credit
    4
  • 履修年次Standard Year for Registration
    2-4
  • 学期Semester
    前期
  • クラスClass
  • 曜限Day/Period
    金曜3時限/火曜2時限
  • 教室Classroom
    2-407
  • 授業形態Course Type
    講義・演習
  • メディア授業Distance Learning Course
  • 備考Remarks
    使用言語:日本語
  • 実務経験のある教員等による授業科目Taught by instructor(s) with practical experience
  • 学内単位互換科目としての受講可否Availability for inter-departmental credit transfer
    不可

授業の到達目標Objectives to be Attained

SEQ 1

DP観点 / Diploma Policy
Target Category
A(知識・技能)
 言うまでもなく、刑法理論と実務状況について知識を修得し、具体的事案に適用して分析し、結論を導き出すできる能力を身につけることです。
 但し、受講生が全員法曹をめざしているわけではないので、本講義では、刑法上の様々な概念について「理解する」ことをめざし、「暗記する」ことまでは期待しません。目標は、法学部生として、刑法に関連する具体的事案について、どういう点が刑法の適用上の問題となるかを見抜き、教科書やノートを参照しながらでいいので、今の判例ではどういう結論になり、理論的にはどのような問題が指摘されているかを論述する能力を身につけることです。なお、法曹をめざす諸君は、上の作業を参照なしにできるようにならなければなりませんので、暗記する作業(つまり受験勉強)を、自分でおこなってください。
 また、判例や教科書等の事例処理や法的記述に触れることで、法的判断・分析能力、法的文章の作成力を育成することも重要な課題です。この点は、講義中にも一定限度で踏み込んで説明しますが、普段から講義で触れた判例の現物を読んだり、教科書を熟読することで、自ら修得する必要があります(特に、文章作成力)。

授業の概要Method of Instruction

【授業の概要】
 本講義では、刑法総論のうち最も重要な「犯罪論」の分野について解説します。
 「犯罪論」とは、「犯罪とは何か」という主題に学問的にアプローチする営みです。そこでは、「現在、どのような行為を犯罪として罰しているか」という現状の状況の分析にとどまらず、「どのような行為が犯罪として罰されるべきか(罰してよいか)」が問題とされます。従って、犯罪論の「犯罪とは何か」という主題は、そこにどのような内容を盛り込むかによって、「現状批判」の学ともなりうるし、「現状追認」の学ともなりうるものです。刑法学では、この主題をめぐって、「侵害の惹起」に犯罪の本質を求める立場と、「規範違反(行為の基準からの逸脱)」に犯罪の本質を求める立場とが対立してきました。この対立は、古くは、客観主義刑法理論と主観主義刑法理論との対立、また新しくは、行為反価値論と結果反価値論との対立という形で、刑法理論の諸分野での対立の主旋律をなしています。本講では、この根幹的対立の構造から説き起こし、犯罪の成立要件を巡る議論に、その対立軸がどのように関わっているかを明らかにしていきます。
 本講義では、個々の解釈問題において、常に原理論にまでさかのぼって考察し、制定法主義を背景とした国家の独占的法創設権を背景とした近代・現代国家にあっては、客観主義刑法理論—結果反価値論に原則的正当性が存することを確認したいと思います。

 なお、下に掲げる「授業計画(各回の授業内容)」は、あくまで「めやす」であり、実際の講義は、受講生の反応・理解度や注目される事件や判例の出現等に応じて厚く論じるなど、フレキシブルにおこないます。「授業計画」ではあまり微細な内容まで特定せず、1〜6の項目に分けて示していますが、それぞれの項目的な内容は、次のとおりです。

1 第1回〜第4回予定 :刑法総論入門
 第一部 総説
  一 刑事法の鳥瞰図
  二 犯罪についての二つのとらえ方—結果無価値論と行為無価値論
  三 刑法の基本原則
   (1) 侵害原理
   (2) 責任原理
   (3) 謙抑原理
   (4) 罪刑法定原理
   (5) 罪刑均衡原理
  四 犯罪論の体系と構成要件論
2 第5回〜第11回予定:犯罪成立の基本要件1—行為性と構成要件該当性
 第二部 犯罪論の体系
   一 行為論・構成要件論
    (1) 行為主体
    (2) 行為(自然的行為と実行行為)
    (3) 結果(侵害犯・危険犯・形式犯・未遂犯)
    (4) 因果関係
    (5) 不真正不作為犯
3 第12回〜第17回予定:犯罪成立の基本要件2—違法性
  二 違法論
   (1) 違法論総説(「違法=法に反している」とはどういうことか?)
   (2) 法定違法阻却事由
    1. 正当行為
    2. 緊急行為(正当防衛・緊急避難)
   (3) 超法規的違法阻却
4 第18回〜第23回予定:犯罪成立の基本要件3—有責性
  三 責任論
   (1) 責任論総説(「責任がある」とはどういうことか?)
   (2) 期待可能性
   (3) 責任能力
   (4) 原因において自由な行為
   (5) 故意
   (6) 錯誤論
   (7) 過失
5 第24回〜第27回:複数人による犯罪遂行形態—共犯論
  四 共犯論
   (1) 共犯の基本原理
   (2) 共同正犯
   (3) 教唆犯
   (4) 従犯
6 第28回:罪数論―一罪の範囲と複数の犯罪の処断方法
   (1) 複数の犯罪の処理方法
   (2) 一罪の範囲
    1. 本来的一罪
    2. 科刑上一罪

事前・事後学習、時間等Study Required outside Class(Preparation, etc.)

【準備学習等について】
 初講日以前に、とりあえず刑法学について入門的知識を得ておきたいという積極的な方は、山口厚『刑法入門 』(岩波新書) あたりを通読しておくといいでしょう。
 各回ごとの準備については、次回の受講テーマの箇所について、各人の教科書(後掲「テキスト」の欄に書いたように、必ずしも指定教科書でなくてもかまいません)の対応箇所を読んでくること。刑法学は体系的な学問なので、体系の組み立て方自体についても対立があり、教科書によって、項目の出現順が異なっているので、当初はとまどうかもしれません。その場合は遠慮なく教員に相談すること。
 なお、上述のとおり、次に掲げる「授業計画(各回の授業内容)」は、「めやす」であり、講義は、フレキシブルにおこないますので、何かの事情で欠席した諸君(長期欠席の場合は特に)は、周辺の受講者にその講義でどこまで進んだかを確認して、次の講義を受けてください。

授業計画(各回の授業内容)Course Outline

  • 1回目Session 1 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    1 刑法総論総説―犯罪成立の基本前提(1)
  • 2回目Session 2 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    1 刑法総論総説―犯罪成立の基本前提(2)
  • 3回目Session 3 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    1 刑法総論総説―犯罪成立の基本前提(3)
  • 4回目Session 4 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    1 刑法総論総説―犯罪成立の基本前提(4)
  • 5回目Session 5 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    2 犯罪成立の基本要件1—行為性と構成要件該当性(1)
  • 6回目Session 6 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    2 犯罪成立の基本要件1—行為性と構成要件該当性(2)
  • 7回目Session 7 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    2 犯罪成立の基本要件1—行為性と構成要件該当性(3)
  • 8回目Session 8 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    2 犯罪成立の基本要件1—行為性と構成要件該当性(4)
  • 9回目Session 9 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    2 犯罪成立の基本要件1—行為性と構成要件該当性(5)
  • 10回目Session 10 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    2 犯罪成立の基本要件1—行為性と構成要件該当性(6)
  • 11回目Session 11 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    2 犯罪成立の基本要件1—行為性と構成要件該当性(7)
  • 12回目Session 12 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    3 犯罪成立の基本要件2—違法性(1)
  • 13回目Session 13 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    3 犯罪成立の基本要件2—違法性(2)
  • 14回目Session 14 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    3 犯罪成立の基本要件2—違法性(3)
  • 15回目Session 15 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    3 犯罪成立の基本要件2—違法性(4)
  • 16回目Session 16 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    3 犯罪成立の基本要件2—違法性(5)
  • 17回目Session 17 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    3 犯罪成立の基本要件2—違法性(6)
  • 18回目Session 18 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    4 犯罪成立の基本要件3—有責性(1)
  • 19回目Session 19 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    4 犯罪成立の基本要件3—有責性(2)
  • 20回目Session 20 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    4 犯罪成立の基本要件3—有責性(3)
  • 21回目Session 21 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    4 犯罪成立の基本要件3—有責性(4)
  • 22回目Session 22 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    4 犯罪成立の基本要件3—有責性(5)
  • 23回目Session 23 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    4 犯罪成立の基本要件3—有責性(6)
  • 24回目Session 24 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    5 複数人による犯罪遂行形態—共犯論(1)
  • 25回目Session 25 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    5 複数人による犯罪遂行形態—共犯論(2)
  • 26回目Session 26 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    5 複数人による犯罪遂行形態—共犯論(3)
  • 27回目Session 27 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    5 複数人による犯罪遂行形態—共犯論(4)
  • 28回目Session 28 対面授業 (Face-to-Face) 事前・事後学習 Study required outside class(Preparation/review):200分
    6 罪数論

教科書・テキストTextbooks

 講義そのものは教科書に即して行うわけではなく、独自作成の教材を利用して行います。授業中に教科書を参照してもらうこともありませんので、下記の本を用意していなければ困るということはありません。他の刑法総論のテキストが手元にあれば、それを利用してもかまいませんが、予習・復習用に必ず一冊は持っておくこと。また近年、刑法は法改正が頻繁なので、なるべく新しいものがいいでしょう(特に各論)。 また、体系性を考えると、総論・各論の著者は同一である方が いいです。手元に教科書はないし、初めてなのでどれを買えばいいかわからないという方のために、一応、福永先生が刑法各論で使う教科書に合わせて、次の本を教科書としておきます。
 本庄武編著『ベイシス刑法総論』(八千代出版)

 その他、単一著者による一貫したものをご希望の方には、松原芳博『刑法総論』(日本評論社)などもお勧めです。
 なお、教材ファイルはmoodleにアップしているので(wordファイルです)、各自でダウンロードして授業に臨んでください。

参考書等References

 学修用と言うよりは理論書ですが、読んでくれると嬉しいです。
 梅崎進哉・宗岡嗣郎『刑法学原論』成文堂
 梅崎進哉『刑法における因果論と侵害原理』(成文堂)

課題の種類・内容Homework, Assignments, etc.

課題に対するフィードバックの方法Feedback Method

成績評価Evaluation

成績評価の方法 / Evaluation Method

 講義の到達目標との関連で、持ち込み自由の論述式試験によって行います。その際、持ち込まれたノートや教科書は自己の主張を展開するための道具にすぎないことを自覚してください。評価は、単純な記憶量ではなく、理解度、法的思考力、問題意識等に力点を置きます。従って、持ち込み自由だからといって決して容易な試験ではなく、むしろ、刑法に関する問題意識を持って講義に参加していなかった諸君にとっては厳しいものになるかもしれません。出題は上の目的を考慮して事例問題の形式を採るので、教科書等の該当部分の記述を丸写ししただけで、事例を適切に把握できていなければ「理解度」を示したことにはならないからです。

観点別評価の入力項目(ルーブリックとその使用方法) / Target to be Evaluated

SEQ 1

DP観点 / Diploma Policy
Target Category
A(知識・技能)
成績評価の規準 / Evaluation Criteria
 刑法総論上の種々の基本前提と犯罪成立要件について、教科書やレジュメ等の資料を補助的に用いつつも、限られた時間内で、比較的単純な具体的事例に対して、説得的で妥当な結論を導き出し、それを文章化する能力を身に着けているか。
 具体的には、①刑法総論上の基本前提と犯罪成立要件等に対する理解度、②法的事例を分析する分析能力、③分析内容を文章化して説得的に示す文章力、を測定する。その際、特に①を重視する。(①60%程度、②③各々20%程度)。
評価尺度(水準)/ Evaluation Scale
卓越水準 / Outstanding
①刑法総論上の基本前提と犯罪成立要件の理解、②法的分析能力、③法的文章力について、いずれも卓越した答案が作成できている。
目標到達水準 / Excellent
①刑法総論上の基本前提と犯罪成立要件の理解、②法的分析能力、③法的文章力について、いずれも充分な答案が作成できている。
目標途上水準 / Good
①刑法総論上の基本前提と犯罪成立要件の理解、②法的分析能力、③法的文章力のいずれかについて、不充分な点があるが、必要な水準に達した答案が作成できている。
目標下限水準 / Adequate
①刑法総論上の基本前提と犯罪成立要件の理解、②法的分析能力、③法的文章力のいずれかについて、不足はあるが、最低限の答案は作成できている。
近接水準 / Inadequate
該当なし
評価不能 / Unevaluable
評価に値する情報が不足。または上記の水準に値せず、能力として評価に不適。
成績評価に関するその他の確認事項 / Other Information for Evaluation

履修上の注意Other Course Information

 出席をとるつもりはないので、講義を聞く意思がない者は、出席点をかせぐためにだけ出席する必要は全くありません。ただし、その場合は、独習によってカバーしない限り、学習不足によるリスクは自らが負うことになります。
 上記のとおり、教材については、Moodleにアップしているワードファイルを各自でダウンロードして準備しておいてください。