シラバス - 行政救済法

  • ナンバリングコードCode
  • 科目名Subject Name
    行政救済法
  • 担当者名Instructor
    石森 久広
  • 単位Credit
    4
  • 履修年次Standard Year for Registration
    3-4
  • 学期Semester
    前期
  • クラスClass
  • 曜限Day/Period
    木曜3時限/月曜3時限
  • 教室Classroom
    4-203
  • 備考Remarks
    使用言語:日本語
  • 実務経験のある教員等による授業科目Taught by instructor(s) with practical experience

授業の到達目標Objectives to be Attained

 国民が行政の活動により権利侵害を受けたとき、その救済を図るための法的しくみを学びます。行政事件訴訟法、行政不服審査法、国家賠償法が主な対象となります。
 高木光=高橋滋=人見剛著『行政法事例演習教材』初版はしがきには、ドイツの大学で学生が行政法に「逃げ腰」になる原因のひとつとして、「民事法においては、民事の裁判所に訴えることは自明であるので、権利の実現手段について触れる必要はない、しかし、公法の事例においては、そもそも訴訟を提起できるのか、またどの裁判管轄になるのかが問題」となるというGunter Schwerdtfegerの指摘が紹介されています。つまり、行政法の問題は、事案に応じた最適な行政争訟手段を選択できてはじめて、「行政法総論」で修得した成果を生かすことができることになるという点で、理解を少し難しくしているところがあると思います。
 この「行政救済法」の授業では、行政法に関する事案がどのような方法で紛争解決に導かれるのか、行政救済の法的しくみに関する理解と、そこに通底する基本的考え方を修得してもらうことを目指します。

授業の概要Method of Instruction

 法学部では、行政法科目が「行政法総論」(4単位)と「行政救済法」(4単位)で構成され、本講義は、後者にあたります。
 授業は、基本的に、テキストに沿いながら、テキストに書かれていることを(重要部分を特に)しっかり理解するという方針の下で進めたいと考えています。テキストに書かれていないことも多々話をすると思いますが、あくまでテキストに書かれていることを理解してもらうために持ち出すのだと理解してください。
 担当者は、法科大学院専属に伴い法学部を離れて以来、11年ぶりにこの「行政救済法」を担当します。法学部法務コースの学生が受講していることも念頭におきつつ、しかし、行政法を理解したいと思う初学者にどう話したら難解な行政法理論を理解してもらえるか、試行錯誤のうえ進めていきたいと思っています。なお、授業計画は下記のとおりですが、進めていくうえで変更もあり得ますのでご了承ください(その都度示します)。
 授業はすべて対面により実施する予定ですが、遠隔授業に移行せざるを得ない場合は、〔1〕Webex等を用い、できるだけ「同時双方向」で実施したいと思います。〔2〕しかし、それも難しい時は、「オンデマンド」形式(各回、①Moodle上の指示に従い予習→②授業内容を録画(録音)したものを視聴→③小テスト受験+④メールによる質問・応答)で実施する予定です。大学の「感染拡大警戒レベル」の変更に応じた授業実施方法の変更があれば、随時、Moodle上にてお知らせします。

事前・事後学習、時間等Study Required outside Class(Preparation, etc.)

 各回の受講にあたり、3時間に相当する自主学習を求めます(理解度に応じて時間は各自調節してください)。
 事前には(良くわからなくてかまいません)、①予定の箇所を読んだうえで授業に臨んでください(テキストが476頁あり、1回あたり17頁前後となります)。その際、②事前にMoodleに提示された講義資料にもあわせて目を通してください(以上、1時間程度)。
 事後には、③授業や講義資料(授業で追加したものは終了後にMoodleにアップロードします)を基に、もう一度、テキストの該当箇所、登場した判例を読み直してください。その際、復習事項をテキストに書き足すなどして「自分だけのテキスト」に仕立てていくことも有益だと思います(以上、1時間程度)。そのうえで④小テスト等の課題があれば取組みをお願いします(30分程度)。あわせて期日経過後には確認をお願いします(30分程度)。授業前に比べ格段にわかるようになっていれば大成功、そうでなければ私にも責任があり、⑤遠慮なく質問をお願いします。

授業計画(各回の授業内容)Course Outline

  • 1回目Session 1
    4/07T 序論・第1章 裁判を受ける権利と多様な行政訴訟(Tx.1-24)
  • 2回目Session 2
    4/11M 第2章 取消訴訟の基本構造/第3章 管轄、出訴期間、被告適格(Tx.25-47)
  • 3回目Session 3
    4/14T 第4章 処分性(1)(Tx.48-58)
  • 4回目Session 4
    4/18M 第4章 処分性(2)(Tx.59-69)
  • 5回目Session 5
    4/21T 第4章 処分性(3)(Tx.69-82)
  • 6回目Session 6
    4/25M 第5章 原告適格(1)(Tx.83-90)
  • 7回目Session 7
    5/02M 第5章 原告適格(2)(Tx.91-100)
  • 8回目Session 8
    5/09M 第5章 原告適格(3)(Tx.100-111)
  • 9回目Session 9
    5/12T 第6章 訴えの利益(1)(Tx.112-119)
  • 10回目Session 10
    5/16M 第6章 訴えの利益(2)(Tx.119-129)
  • 11回目Session 11
    5/19T 第7章 取消訴訟の審理方法(1)(Tx.130-148)
  • 12回目Session 12
    5/23M 第7章 取消訴訟の審理方法(2)(Tx.148-162)
  • 13回目Session 13
    5/26T 第7章 取消訴訟の審理方法(3)(Tx.162-177)
  • 14回目Session 14
    5/30M 第7章 取消訴訟の終了(Tx.178-198)
  • 15回目Session 15
    06/02T 第9章 出訴期間経過後の救済方法(Tx.199-211)
  • 16回目Session 16
    06/06M 第10章 義務付け訴訟(Tx.212-237)
  • 17回目Session 17
    06/09T 第11章 差止訴訟(Tx.238-252)
  • 18回目Session 18
    06/13M 第12章 公法上の当事者訴訟(Tx.253-274)
  • 19回目Session 19
    06/16T 第13章 仮の権利救済制度/(Tx.275-302)
  • 20回目Session 20
    06/21M 第14章 民衆訴訟及び機関訴訟(Tx.303-326)
  • 21回目Session 21
    06/23T 第15章 不服申立制度の基本構造(Tx.327-341)
  • 22回目Session 22
    06/27M 第16章 審査請求・審理手続(Tx.342-373)
  • 23回目Session 23
    06/30T 第17章 国家賠償法1条(1)(Tx.376-396)
  • 24回目Session 24
    07/04M 第17章 国家賠償法1条(2)(Tx.396-420)
  • 25回目Session 25
    07/07T 第18章 国家賠償法2条(1)(Tx.421-431)
  • 26回目Session 26
    07/11M 第18章 国家賠償法2条(2)/第19章 賠償責任をめぐる諸問題(Tx.431-446)
  • 27回目Session 27
    07/14T 第20章 損失補償の基本問題(Tx.447-476)
  • 28回目Session 28
    07/21T 振り返り・補足

教科書・テキストTextbooks

大橋洋一『行政法Ⅱ 現代行政救済論[第4版]』(有斐閣、2021年)(3800円+税)*第4版を使用:版に注意

参考書等References

①宇賀克也・交告尚史・山本隆司編『行政判例百選Ⅱ(第7版)』(有斐閣、2017年)
②大橋洋一・斎藤誠・山本隆司編『行政法判例集Ⅱ‐救済法〔第2版〕』(有斐閣、2018年)
③大橋真由美・北島周作・野口貴公美『行政法判例50!』(有斐閣、2017年)
④村上裕章・下井康史編『判例フォーカス行政法』(三省堂、2019年)
⑤原田大樹『判例で学ぶ法学 行政法』(新世社、2020年)
⑥高橋滋・野口貴公美・磯部哲・大橋真由美編『行政法 Visual Materials〔第2版〕』(有斐閣、2021年)
⑦北村喜宣・川崎政司・渡井理佳子編『行政法事典』(法学書院、2013年)
⑧黒川哲志・下山憲治・日野辰哉 編『確認・行政法用語230(第2版)』(成文堂、2016年)
⑨大橋洋一『法学テキストの読み方』(有斐閣、2020年)
*その他、学修度合いに応じた基本書の紹介を中心に、適宜、授業時に紹介します。

課題の種類・内容Homework, Assignments, etc.

 小テスト等の課題は成績評価にも組み入れられます。受験・取組みのための授業内容・判例の復習等をお願いします。また、終了後は、理解を定着させるための復習をお願いします。

課題に対するフィードバックの方法Feedback Method

 実施した小テスト等の課題については、期日経過後にMoodle上で、また、必要に応じて講義の中等で解説を行います。

成績評価の方法・基準Evaluation Criteria/Method

 授業終了後、Moodle上で実施する小テスト等の課題の合計点(100%)で評価します(シラバス提出時での予定)。
 *3分の2以上の受験回数(提出回数)がある人につき、
   ▶合計得点90点以上=S 80点以上=A 70点以上=B 60点以上=Cの評価をします。
   ▶合計得点60点未満の人又は受験回数(提出回数)3分の2未満の人には単位は認定されません。
 *出題は、短答式〔正誤選択式、多肢選択式、記述式等〕を基本に行い、本講義の到達目標として示した「実際の行政法に関する事案がどのような方法で紛争解決に導かれるのか、行政救済の法的しくみに関する理解と、そこに通底する基本的考え方を修得」できているかどうかを試すものとします。公務員試験等各種国家試験の過去問等も(適宜手を加えて)出題に用います。
 *なお、講義開始時(遅くとも3回目までに)、7月に定期試験を確実に実施できる状況であれば、定期試験の結果を含むべく成績評価の方法を見直したいと思っています。あらかじめお含みおきください。

履修上の注意Other Course Information

 行政法を理解するには、在学中に「行政法総論」(「行政法」)と「行政救済法」の両方を受講することをお勧めします(履修が叶わない場合は、任意の基本書で「行政法総論」(に該当する部分)を読んでみることをお勧めします)。履修する場合の順序は、法学部のカリキュラムポリシーに基づき「行政法総論」→「行政救済法」とするのが望ましいと思いますが、この2つの科目には相互補完的な面もあり、2年次に「行政法総論」を受講できなかった人については、逆になっても(「行政法総論」が「行政救済法」のあとになっても)かまわないと思います。