シラバス - 西洋経済史

  • ナンバリングコードCode
  • 科目名Subject Name
    西洋経済史
  • 担当者名Instructor
    花田 洋一郎
  • 単位Credit
    4
  • 履修年次Standard Year for Registration
    3-4
  • 学期Semester
    前期
  • クラスClass
  • 曜限Day/Period
    月曜3時限/水曜3時限
  • 教室Classroom
    2-511
  • 備考Remarks
    使用言語:日本語
  • 実務経験のある教員等による授業科目Taught by instructor(s) with practical experience

授業の到達目標Objectives to be Attained

 本講義では、現代ヨーロッパ世界の政治的・社会経済的・文化的淵源を古代末期から中世にかけて見出し、さらに工業化の展開の社会経済的条件がいかなる背景のもとでそろい、西欧諸国で展開したのか理解することを目的とする。講義の特徴としては、最初に19世紀以来のさまざまな経済・歴史理論の概略を理解し、それから古代末期以降のヨーロッパ史を、最新の歴史学の成果と考古学の成果を取り入れつつ論じてゆく点が挙げられる。近世においては国際経済の中心移動や英仏独蘭の動向に注目しながら、政治と経済の絡み合いを重点的に論じる。近代以降に関しては産業革命の展開を、特に技術史に力点を置いて論じる。豊かな歴史的知識と幅広い歴史的視野をもって、物事を多面的に理解し、現代世界を冷徹に見ることの出来るグローバル人材の養成(=国際的な教養人の育成)を目指す。  
 グローバル化が激しく進む現代において、わたしたちには、相互理解を深めて交流を促進するにはそれぞれの国や地域が持つ長い歴史に敬意を払い、歴史の光と影をしっかり見つめて、未来を見通す覚悟が必要である。この講義のもう一つの目標は、学生諸君が次の点を理解してくれるようになることである。すなわち、ヨーロッパの歴史を土台として、日本を含むアジア、南米、アフリカなどとの関係を考慮しつつ、現代世界が過去の歴史によって大きく規定された世界であり、歴史(=伝統)の軽視は未来を見通す目を曇らせてしまいかねないということである。

授業の概要Method of Instruction

 中世(9〜15世紀)から帝国主義時代(19世紀)までのヨーロッパ経済史を中心に講義する。講義では国内外の最新の研究成果を積極的に摂取しつつ、主に大陸諸国家・諸地域における社会経済の史的展開を、その独自性に着目しながら辿ってゆきたい。ただし、講義内容はヨーロッパに限定することはせず、東ヨーロッパ、日本を含むアジア、そしてイスラム世界などとの関連に目配りする。なお中世については、国民国家が成立する以前であるため、ヨーロッパ全域が対象となる。講義では、専門用語として英語以外にフランス語、ドイツ語、オランダ語、スペイン語、イタリア語、ラテン語などが出てくるが、様々な言葉の起源と意味にも興味をもって聞いてほしい。
 講義に関係する配布資料は全てMoodleに挙げておく。講義では、配布資料を基に学生からの質問を受けながらそれをベースにして進める予定である。

事前・事後学習、時間等Study Required outside Class(Preparation, etc.)

 講義は原則として対面で行う。授業に関係するレジュメ資料等はMoodleにアップロードするので、受講者は事前に目を通し、質問を考えておくこと。対面授業では受講生の質問をベースに講義を行い、Moodleにアップロードできない資料などを配布する。
 授業は講義予定表に即して展開されるので、テキストを中心に他の参考文献も含めて予習をすること(2時間程度)。Youtube等を利用して歴史関係の映像資料(NHKの関係番組、『映像の20世紀』など)を見ることもすすめる(2時間程度)。講義では、図書館に配架されている西洋史・西洋経済史関連文献を、講義の初回および講義で適宜配布するプリントに記載して準備学習の素材とするように指示する(2時間程度)。またテキストの参考文献表も大いに役立つので、積極的に本を探して読んでみるように指示する。また新刊書で有益なものは講義でその内容を紹介し、一読を薦める。対面授業で実施する場合は11月に課題レポートを出すので、その参考文献として推薦できる書物も積極的に紹介する(オンライン授業の場合は全3回レポートを課す)。基本的に図書館に配架されているので、定期的に図書館で講義内容を復習するように強く勧める。

授業計画(各回の授業内容)Course Outline

  • 1回目Session 1
    ガイダンス:講義の内容紹介。西洋経済史とはどのような学問か。
  • 2回目Session 2
    西洋経済史をめぐる諸理論(1):ドイツ歴史学派、マルクス主義歴史学
  • 3回目Session 3
    西洋経済史をめぐる諸理論(2):ウェーバー、シュンペータ、経済成長論
  • 4回目Session 4
    西洋経済史をめぐる諸理論(3):アナール学派
  • 5回目Session 5
    西洋経済史をめぐる諸理論(4):世界システム論、制度派経済学、経済人類学
  • 6回目Session 6
    西洋経済史をめぐる諸理論(5):モラルエコノミー、ミクロストリア
  • 7回目Session 7
    フランク王国時代西欧社会経済(1):フランク王国の成立と発展
  • 8回目Session 8
    フランク王国時代西欧社会経済(2):西欧的農業の誕生
  • 9回目Session 9
    フランク王国時代西欧社会経済(3):封建制と領主制
  • 10回目Session 10
    中世盛期の西欧社会経済(1):都市の成立
  • 11回目Session 11
    中世盛期の西欧社会経済(2):都市社会と市場
  • 12回目Session 12
    中世盛期の西欧社会経済(3):国際市場の中心シャンパーニュ大市
  • 13回目Session 13
    中世後期の西欧社会経済(1):都市と農村
  • 14回目Session 14
    中世後期の西欧社会経済(2):黒死病
  • 15回目Session 15
    中世後期の西欧社会経済(3):英仏百年戦争
  • 16回目Session 16
    ヨーロッパの拡大と国際競争の開始(1):16世紀の経済発展、国際経済の中心移動  
  • 17回目Session 17
    ヨーロッパの拡大と国際競争の開始(2):大航海時代、ポルトガルとスペインの時代
  • 18回目Session 18
    17〜18世紀の経済危機と国家の形成(1):オランダ共和国の盛衰
  • 19回目Session 19
    17〜18世紀の経済危機と国家の形成(2):イギリスの台頭
  • 20回目Session 20
    17〜18世紀の経済危機と国家の形成(3):フランス絶対王政
  • 21回目Session 21
    17〜18世紀の経済危機と国家の形成(4):新興軍事国家プロイセンの成長とハプスブルク家オーストリアの没落、ポーランド分割
  • 22回目Session 22
    イギリス産業革命(1):プロセス、諸要因
  • 23回目Session 23
    他のヨーロッパ国家の工業化(1)ベルギー
  • 24回目Session 24
    他のヨーロッパ国家の工業化(2)フランス
  • 25回目Session 25
    他のヨーロッパ国家の工業化(3)ドイツ
  • 26回目Session 26
    第2次産業革命の時代(ドイツとアメリカ)
  • 27回目Session 27
    アメリカ産業革命、北米経済の台頭、ビッグ・ビジネス
  • 28回目Session 28
    2度の世界大戦と欧米経済

教科書・テキストTextbooks

基本テキストは、奥西孝至・鳩澤歩・堀田隆司・山本千映『西洋経済史』有斐閣、2010年。講義の基本的な内容はMoodleにレジュメ資料と解説を載せておくので事前に参照しておくこと。ただし講義の前半は、テキストではなく、新規に作成した資料を基にして講義を進める。後半は上述のテキストをメインとするレジュメを作成している。これらのレジュメ資料と関係資料は全てMoodleからプリントアウトするなどして、予習しておくこと。
 講義ではテキストをただまとめるような資料作成はしていない。テキストに書かれていない事柄についても多く掲載している。講義前半は、歴史諸理論と中世ヨーロッパ経済が中心となる。近世・近代経済を扱う後半の内容はテキストに準拠する。テキストは試験とも密接に関係するので必ず購入すること。
 

参考書等References

中世に関しては、堀越宏一・甚野尚志編著『15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史』(ミネルヴァ書房)。ヨーロッパ全体に関して金井他編『世界経済の歴史』(名古屋大学出版会);近藤和彦編『西洋世界の歴史』山川出版社、1999年。経済史の他のテキストとして、小野塚知二『経済史』有斐閣、2018年、河崎・奥編著『一般経済史』ミネルヴァ書房、2018年を薦める。また図書館の指定図書および西洋史・西洋経済史関係の書籍を参照すること。山川出版社のブックレットも大いに参考にしてほしい。さらに岩波書店の「ヨーロッパの中世」シリーズも中世史研究には役立つし、新しく刊行開始された岩波世界史講座もすすめる。そのほかに川北稔『イギリス近代史講義』講談社現代新書、2010年;羽田正『新しい世界史へ』岩波新書、2011年;秋田他編『「世界史」の世界史』ミネルヴァ書房、2016年;近藤和彦『イギリス史10講』岩波新書、2013年;柴田三千雄『フランス史10講』岩波新書、2006年、坂井榮八郎『ドイツ史10講』岩波新書、2003年がお奨め。西洋史の様々な歴史トピックについては金澤監修『論点・西洋史学』ミネルヴァ書房、2020年は便利である。産業革命については、A.C.アレン(眞嶋他訳)『世界史の中の産業革命』名古屋大学出版会、2017年とジョエル・モキイア(長尾監訳)『知識経済の形成 産業革命から情報化社会まで』(名古屋大学出版会、2019年)を薦める。

課題の種類・内容Homework, Assignments, etc.

 講義では、感染予防のためのオンライン形式でなければ、6月頃に課題レポートの提出を求める(オンライン継続の場合は計3回のレポートとなる)。内容は、西洋経済史で紹介した経済史に関する古典、あるいは西洋古典文学の名著を取り上げて、その内容と時代背景を考察するものである。課題の目的は、大学時代に古典の名著をぜひとも読んでほしく、レポートを機会にして数世紀にわたり読み継がれる名著に触れてほしいからである。そのような古典的名著は、分野に関係なく等しく時代の影響を受けている、すなわち歴史的産物であることを理解してほしいからである。文学作品に関して言えば、以下に読んでほしいものを書いておく。ホメロス『イリアス』『オデュッセイア』、ダンテ『神曲』、ボッカチオ『デカメロン』、セルバンテス『ドン・キホーテ』、シェイクスピアの4大悲劇(ハムレット、リア王、マクベス、オセロ)、デフォー『ロビンソン・クルーソー』、スウィフト『ガリバー旅行記』、ゲーテ『ファウスト』、ディケンズ『大いなる遺産』『クリスマスキャロル』『オリヴァー・ツイスト』、トルストイ『戦争と平和』、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』、ユゴー『レ・ミゼラブル』、トーマス・マン『魔の山』『ブッデンブローク家の人びと』などなど。もちろん自分で他に選んだものでも構わない。

課題に対するフィードバックの方法Feedback Method

 提出された課題レポートについては、希望者には朱書で添削を行い返却する。またより深く勉強したい者には情報を提供する用意がある。 授業では毎回質問用紙を配布する。質問については次回の授業で回答し、授業内容の補足説明、より深い歴史的背景の説明、現代社会とのかかわりなど多面的な回答を心掛ける。受講者は積極的に質問してほしい。

成績評価の方法・基準Evaluation Criteria/Method

出席はとらないので出席点はなし(出席は当然である)。6月に課題レポートを出す。一月かけて仕上げて提出すること。良い出来のレポートには最大30点まで加点する。講義開始前に配布する用紙には、講義への注文や質問を書くこと。質問については必ず次回に答える。良い質問のときはその質問者に加点する(1回につき1点)。試験は後期試験のみ行い、上述の加点を考慮しながら、後期試験の結果を基に成績評価を行う。

履修上の注意Other Course Information

講義に際しては、世界史の知識は必ずしも必要としません。講義を通じて、出席者各人が自由にイメージを膨らませて、自分の力で新たな知識をつけてゆくことを希望する。図書館に配架されている書籍や私の蔵書を適宜紹介するので、自分で学習すること。特に課題レポートとの関係で自分が関心を持つテーマを探しておくこと。質問などを通じて積極的に参加することを望みます。出席はとらない。最近は板書の不手際を指摘する学生も増えてきた。高校までの授業とは異なり、勉強において板書する内容は重要ではない(重要なことは配布プリントとテキストにすべて書いています)。話をよく聞きとって、分からないところは聞くこと。他人任せの授業態度はとらずに、積極的に授業にかかわって理解を深めること。
向学相談について。[質問方法]連絡はメールもしくは講義の終了後に口頭で。[時間]月曜日4時間目、水曜日4時限目。場所は研究室。