シラバス - 日本キリスト教文学

  • ナンバリングコードCode
  • 科目名Subject Name
  • 担当者名Instructor
    桑原 理恵/濱野 道雄/藤方 玲衣/G.ロドリゲス/才藤 千津子/日原 広志
  • 単位Credit
    4
  • 履修年次Standard Year for Registration
    1-4/2-4
  • 学期Semester
    通年
  • クラスClass
  • 曜限Day/Period
    木曜5時限
  • 教室Classroom
    1-201/2-506
  • 備考Remarks
    日本キリスト教文学A

    使用言語:日本語
  • 実務経験のある教員等による授業科目Taught by instructor(s) with practical experience

授業の到達目標Objectives to be Attained

日本キリスト教文学A・Bは、通年で受講することを前提にして講義内容を組み立てる。
基本的には講義形式で進めるが、受講者の発言や議論にも期待している。
受講者が主体的に文学テクストと出会うことで、自己の価値観・世界観に意識的になれるような近現代の思考のパラダイムを提示する。
テクストを読む行為が、意識・無意識にかかわっている現実と出会い直す機会となることを心掛ける。

授業の概要Course Overview

 キリスト教文学というと、キリスト教信者の作家が書いた護教的な作品を指すと受け取られがちではないだろうか。しかし「日本」と「キリスト教」と「文学」という三者をそれぞれ外に開くと、視界は反転する。そもそも明治維新以後に書かれた日本近現代文学は、なんらかのかたちでキリスト教の影響下に成立している。つまり、日本近現代の歩みそのものが〈西洋〉なるものを受容するプロセスであり、その多くは相克の様相を呈してきた。
 本講義で扱うものは、キリスト教や聖書を主題とするテクスト、あるいはキリスト者によって書かれたテクストに限定しない。むしろ信仰に至らなかった、あるいは批判に転じたり意識的に距離を取るスタンスの文学者のほうを多く扱うことになるだろう。宗教的主題を核に据えて、日本近現代における〈西洋〉受容の諸相を考察することになる。そこには、真の宗教性・聖なるものとは如何なるものか、という問題意識がたち現れてくるはずである。R・オットーが、真に「聖なるもの」とは社会的な道徳規範とは一切無関係で、もっと根源的なものであると指摘したとおりである。特に日本人だからこそ、キリスト教との邂逅を門口として超越的・根源的な何かに至りうる精神性を有しているかも知れないのある。

事前・事後学習、時間等Study Required outside Class(Preparation, etc.)

毎回、レジュメと扱う文学テクストを紙媒体、あるいは電子ファイルで配布する。それらに資料を活用して、授業の進度に応じ受講生は可能な限り事前・事後学習を心掛けて欲しい。
試験前には、「読書案内」として具体的な書籍の一覧を提示する。試験準備として、その中から受講生各自が数冊を選択して読むことになる。その多くは、青空文庫やAmazonサイトを活用して無料で読むことも可能である。

授業計画(各回の授業内容)Course Outline

  • 1回目Session 1
    宮澤賢治とキリスト教①『銀河鉄道の夜』ほんとうのほんとうの神さま、みんなのほんとうの幸い
  • 2回目Session 2
    宮澤賢治とキリスト教②『銀河鉄道の夜』初期形第三次稿のブルカニロ博士、宗教と科学の一致
  • 3回目Session 3
    宮澤賢治の思想①「ビジテリアン大祭」「フランドン農学校の豚」「よだかの星」「なめとこ山の熊」法華経、命の対称性、食物連鎖
  • 4回目Session 4
    宮澤賢治の思想②「農民芸術概論綱要」「雨ニモ負ケズ」『春と修羅』「序」わたくしという現象
  • 5回目Session 5
    遠藤周作とキリスト教①『沈黙』日本という沼地
  • 6回目Session 6
    遠藤周作とキリスト教②「神々と神と」『侍』
  • 7回目Session 7
    遠藤周作とキリスト教③『テレーズ・デスケルー』罪と悪の分離、ユング・仏教(阿頼耶識思想)への接近
  • 8回目Session 8
    遠藤周作とキリスト教④『深い河』東西の一致、宗教多元主義、母なるもの、イエスのまねび
  • 9回目Session 9
    有島武郎・国木田独歩・正宗白鳥:『或る女』『牛肉と馬鈴薯』『何処へ』『内村鑑三』
  • 10回目Session 10
    内村鑑三とその周辺:W.S.クラーク、新渡戸稲造、柏木義円、矢内原忠雄、南原繁、無教会派と非戦論
  • 11回目Session 11
    キリスト教社会主義と大正デモクラシー:木下尚江、吉野作造、賀川豊彦、山村慕鳥、八木重吉
  • 12回目Session 12
    日本キリスト教文学の系譜①北村透谷とその周辺、自由民権運動から『文学界』『女学雑誌」岩本善治、島崎藤村、樋口一葉、田山花袋など
  • 13回目Session 13
    日本キリスト教文学の系譜②:女性解放運動と女子教育、YWCAと廃娼運動、成瀬仁蔵と帰一協会、ユニテリアン
  • 14回目Session 14
    補足とまとめ  

教科書・テキストTextbooks

特定のものは使用しない。受講に必要なレジュメ類は、講義者が用意することを基本とする。
可能な限り青空文庫などを利用して講義者がペーパーを配布するが、長編のものは、安価な文庫本を各自が購入するよう、適宜指示する。

参考書等References

必要に応じて指示する。

課題の種類・内容Homework, Assignments, etc.

授業で扱う文学テクストを読むことが最低限必要であるが、予め読むことを強制はしない。しかし受講者は、可能な限り熱心に読まなくてはならない。
受講後にモチベーションが高まった状態で読むというのでもよいだろう。
そのテクストに対して、どういった観点でアプローチできるか考えながら、各自の観点で論じる準備をするつもりで読むよう心掛ける。

課題に対するフィードバックの方法Feedback Method

扱う文学テクストに受講者各自が関心を寄せるテーマや方向性について、講義者はテクスト毎に確認する。その際、口頭で質問するか、ペーパーでアンケートを取るか、いずれかの方法で行う。

成績評価の方法・規準Evaluation Criteria/Method

定期試験70%、平常点(出席と授業での問題提起、質問などの貢献度)30%とする。
定期試験の期間にペーパーテストの形式で実施するが、すべての資料やノート類を持ち込み可とする。
時間内で小論文を執筆してもらうが、講義者は扱った作品群から受講者の関心が高いものを選び、考察の仕方や特定の観点、分析の方向性を指示する。受講者はあらかじめ各自のアプローチ方法を用意しておく必要がある。
評価基準は、主体的にテクストとかかわる姿勢、テーマへのアプローチの深度、受講者各自の問題意識のありかたとなるだろう。

履修上の注意Other Course Information

日本キリスト教文学A・Bは、通年で受講することを前提とする。日本キリスト教文学のメインストリームをほぼ掴めることに留意して、講義内容を組み立ててある。
ただし講義者は、受講者各自の関心を確認することで、扱う作品やテーマを変更することもできる。初回には必ず出席して欲しい。
また、受講者が勉学を深めていくにつれて、新たな関心や問題意識を持った場合も、講義者はそれに応じて新しいテクストやテーマを講じることも可能である。受講者は講義者に対して、日本近現代文学の範囲内での学びたいテクストや内容を自由にリクエストすることができる。