シラバス - 日本文学(3)

  • ナンバリングコードCode
  • 科目名Subject Name
  • 担当者名Instructor
    西村 将洋(実務家)
  • 単位Credit
    4
  • 履修年次Standard Year for Registration
    1-4
  • 学期Semester
    通年
  • クラスClass
  • 曜限Day/Period
    火曜1時限
  • 教室Classroom
    4-203
  • 備考Remarks
    日本文学A(3)

    使用言語:日本語
  • 実務経験のある教員等による授業科目Taught by instructor(s) with practical experience

授業の到達目標Objectives to be Attained

【到達目標】異文化体験が日本語表現に与えた影響を考える
本講義では以下の3点に関する知識と能力の習得を目指す。
・文字媒体の情報を読解するための基礎的な知識と技術を身につける。
・文字や映像について考察することで、様々な情報を適切に読み取る能力を養う。
・異文化体験が生み出す様々な矛盾や問題を考察することで、現代世界で主体的に判断する力を養う。

授業の概要Course Overview

【テーマ】日本近代文学のドイツ体験:森鴎外のベルリン・ミュンヘン1884-1888
江戸時代の鎖国が終わりを告げ、明治時代に諸外国との交流がはじまると、数多くの日本人が海を渡り、異国の文化を体験することになる。日本人の作家たちもその例外ではなかった。
日本人作家による海外体験は、外国の未知の文化と接する機会を生み出すことになるのだが、注意しておきたい点がある。作家たちは、異国の文化に触れながら、改めて日本を見つめ直し、自国の文化や言語を再発見していた、という点である。
それだけではない。明治以後の日本は急速に欧米諸国の近代文明を吸収するが、海外へ渡った作家たちは、産業化や科学技術が人間へ与える、負の側面を直視することになる。「近代化」という現象に関する、作家たちの思索が始まるのである。文学者の海外体験は、「近代」の意味を探求する旅でもあった。
上記の問題意識に基づいて、異文化体験が生み出した言語表現の豊かさに触れること、それが本講義の目的である。
授業では、森鴎外のベルリンやミュンヘンでの異文化体験を学びながら、「舞姫」や「うたかたの記」などの鴎外の小説を通読する。さらに、同時代のヨーロッパの美術作品や芸術思潮、さらに欧米諸国での日本趣味(ジャポニスム)についても考察する。その後に、鴎外がドイツ留学後に発表した小説「花子」や「かのように」を読解する。
なお授業中はDVDやパワーポイントなどのマルチメディア教材を用いて、鴎外が滞在したベルリンの都市景観や、美術作品、歴史的事項についても適宜解説を加え、小説を立体的に読解する作業を行っていく。
また初回の授業では、例外的に宇多田ヒカルの歌詞を取り上げ、基本的な文章の読み方を解説する予定である。

事前・事後学習、時間等Study Required outside Class(Preparation, etc.)

本科目は講義科目である。授業各回に以下のように、2コマ相当の自主学習が求められる。
・教科書の該当ページ(又は配布プリント)を、授業前に必ず精読してくること(20%)。
・教科書に記されている用語等については、図書館の関連書籍や辞典などを参照して事前に調べておくこと(40%)。
・「課題の種類・内容」欄に記したように、受講生には【確認レポート】と【理解度チェック】を課すので、毎回の講義内容については各自がノートにまとめて復習をしておくこと(40%)。

授業計画(各回の授業内容)Course Outline

  • 1回目Session 1
    文学テクストとは何か?:宇多田ヒカルの自己言及性
  • 2回目Session 2
    森鴎外の生涯とドイツ留学:詩「扣鈕」を読む
  • 3回目Session 3
    「舞姫」を読む1:エリスの虚構と現実
  • 4回目Session 4
    「舞姫」を読む2:アンチ・言文一致体の戦略性
  • 5回目Session 5
    「舞姫」を読む3:都市小説論の射程
  • 6回目Session 6
    「舞姫」を読む4:「舞姫」論争と揺れる主体イメージ +【確認レポート】
  • 7回目Session 7
    「うたかたの記」を読む1:プロットの編制と語り手
  • 8回目Session 8
    「うたかたの記」を読む2:神話的イメージの生成
  • 9回目Session 9
    「うたかたの記」を読む3:〈狂気〉の考古学
  • 10回目Session 10
    「うたかたの記」を読む4:Sturm und Drangの世界観
  • 11回目Session 11
    「花子」を読む1:ナウマンとの論争とジャポニスムの波動
  • 12回目Session 12
    「花子」を読む2:「形の記憶」への思索 +【確認レポート】
  • 13回目Session 13
    「かのように」を読む1:1910年前後と神話性の暴走
  • 14回目Session 14
    「かのように」を読む2:国家批判=国家擁護の論理
  • 15回目Session 15
    まとめ:森鴎外のドイツ体験:【理解度チェック】とその解説

教科書・テキストTextbooks

森鴎外『阿部一族・舞姫』(新潮文庫)
※テキストは「平成18年以降」に刊行された「新潮文庫」を使用する。他の出版社の文庫本も刊行されているので、購入の際には十分に注意すること。

参考書等References

なし(ただし講義の発展的理解に関する参考文献については適宜講義中に紹介する)。

課題の種類・内容Homework, Assignments, etc.

・受講生には2回の【確認レポート】を課す。これは講義後半の時間を使って行う小レポートであり、授業内容と自説の2点を論述するものである。具体的な日程は上記「授業計画」を参照すること(但し実施日は一部変更となる場合がある)。小レポート実施日の講義内容も含むため、授業への出席を必須とする(つまり【確認レポート】実施日に欠席した場合の後日提出等は認めていない)。
・15回目の授業は前半の時間を使って【理解度チェック】を実施する。これは本講義の全体的な内容に関する小テストである。それを引き継ぐかたちで授業後半の時間に小テストの解説を行う。この解説によって本講義全体のまとめを行うとともに、学習した内容のさらなる定着を目指す。

課題に対するフィードバックの方法Feedback Method

【確認レポート】での回答を踏まえながら、授業内容のさらなる定着のために、翌週の授業前半の時間を利用して講義内容の補足的な説明を行う。

成績評価の方法・規準Evaluation Criteria/Method

・【確認レポート】(30点×2回=60点)と【理解度チェック】(40点)で評価する。
・授業への出席を成績評価の前提とするため、欠席は減点対象とする(1回欠席するごとにマイナス5点とする)。
・5回以上授業を欠席した場合は、原則として単位を認定しない。

履修上の注意Other Course Information

・授業中の配布資料は、原則として後日取りに来ても欠席者には配布しない(ただし病欠や公欠など、やむを得ない場合の欠席については個別に対応するので、授業当日のうちにメール等で担当教員へ連絡をすること)。
・上記の「授業計画(各回の授業内容)」は一部変更となる場合がある。